ホームインスペクションと建物状況調査は違う?
ホームインスペクションと建物状況調査は、両方とも不動産取引において不可欠な要素ですが、それぞれ異なる目的があります。この記事では、建物状況調査について説明し、ホームインスペクションとの違いについて掘り下げていきます。とくに、新築の場合にどちらが適しているかに焦点を当て、各調査の利点や制約について説明します。
建物状況調査とは?
建物購入を検討していると、不動産の状態評価に関する複雑な用語が飛び交います。そのなかで、建物状況調査は何を意味し、どのような役割を果たすのでしょうか?建物状況調査の重要性と役割について解説します。
建物状況調査とは
建物状況調査は、中古住宅の実際の状態を把握するための調査です。これは、購入者が建物の現状を理解し、購入後のリスクを回避するのに役立ちます。調査の対象は、建物の構造や耐久性に関連する重要な部分であり、国の法律に基づいて実施されます。
法的な要件
建物状況調査は、調査宅地建物取引業法に基づいて行われ、資格を持つ専門家によって実施されます。既存住宅状況調査技術者と呼ばれる建築士が調査を担当します。彼らは国土交通省の定める講習を修了し、特定の基準に従って建物の状態を評価する能力をもつ資格をもっています。
調査の対象
建物状況調査の対象は、以下の3つです。
・構造耐力上主要な部分: 基礎や外壁など、建物の耐久性に関わる要素
・雨水の浸入を防止する部分: 屋根など、雨漏りの予防に関連する部分
・耐震性: 書類によって確認される建物の耐震性についての情報
調査の範囲
建物状況調査は、歩行可能な範囲内で行われます。これは、目視検査や測定に基づいて行われるため、建物の隠れた部分の詳細な調査は対象外です。また、給排水設備についてはオプションで調査を依頼できます。
重要性と利点
建物状況調査は、購入者にとって重要な利点があります。不動産取引において、建物の状態を正確に把握することは資産の保護と安全性を確保する上で重要です。また、不具合や修復が必要な箇所を特定することで、価格交渉の材料としても活用できます。
ホームインスペクションとの違い
建物状況調査とホームインスペクション、これらのサービスはいったいどのように異なるのでしょうか?購入前の住宅調査において、その違いを理解することは重要です。
ここでは、建物状況調査とホームインスペクションの相違点についてみていきましょう。
対象物件の違い
最初に注目すべき違いは、対象となる物件の種類です。建物状況調査は主に中古住宅を対象としており、新築物件には適用されません。一方、ホームインスペクションは新築一戸建て住宅を含むあらゆる種類の住宅に対応しています。
調査を行う資格と要件
建物状況調査を実施するには、国の登録を受けた既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士(既存住宅状況調査技術者)が必要です。これは高度な専門知識を要し、厳格な要件を満たす資格です。
ホームインスペクションでは、建築士である必要はありません。多くの場合、民間の資格やトレーニングを受けた専門家が調査を実施します。この柔軟性が、新築物件や中古住宅を含む幅広い住宅に対応できる理由の一つです。
調査の内容と範囲
建物状況調査は、構造耐力上主要な部分(基礎や外壁など)や雨水の浸入を防止する部分(屋根や軒裏など)が対象となります。これらの要素の状態や耐久性を評価し、劣化や不具合の有無を確認します。
ホームインスペクションは、建物状況調査の内容に加え、独自の調査項目やノウハウを盛り込んで実施されます。これには、給排水設備、電気設備、断熱性、換気システムなど、より包括的な側面が含まれます。
建物状況調査とホームインスペクションは、目的や対象物件、調査内容において異なります。購入者は、自身のニーズに合った調査サービスを選択することで、不動産取引における賢明な決断を行う際に活用できるでしょう。
新築の調査の場合はホームインスペクション
上記でお伝えした通り、建物状況調査は、中古住宅の現状を把握するために行う調査のため新築物件については対象外です。そのため、新築物件の調査はホームインスペクションを依頼することになります。しかし、そもそも新築なのに物件の調査が必要なのか、疑問に思うかもしれません。
以下で新築物件でホームインスペクションを行う必要性について解説します。
新築物件でも問題は発生する
新築住宅は一見、高品質で欠陥のないように思えますが、実際には施工不良や隠れた欠陥が存在することがあります。建設プロセスでのヒューマンエラーや設計上の問題により、屋根の漏水、給排水設備の問題、絶縁材料の不足などの問題が発生することがあるのです。これらの問題は、新築後数年経ってから表面化することがあり、その際には高額な修繕費用がかかることがあります。
ホームインスペクションの利点
ホームインスペクションは、新築物件においても重要な役割を果たします。専門家によるホームインスペクションを通じて、建物の状態を包括的に評価し、潜在的な問題を発見します。これにより、将来的に必要な修繕費用を見積もることができ、購入者は資産価値を正確に把握できます。
保証期間内の不具合発見
新築物件には通常、一定期間内に不具合が生じた場合、無償で修理してもらえる建物保証が付帯しています。しかし、保証期間が限られているため、問題が発生した際にそれを早期に発見する必要があります。ホームインスペクションを通じて、保証期間内に不具合を発見しやすくなり、修繕費用を抑えられます。
新築物件には隠れたリスクが存在し、ホームインスペクションはそのリスクを最小限に抑え、購入者にとってより安心で確実な不動産取引を実現してくれるのです。
まとめ
ホームインスペクションと建物状況調査は、不動産取引において異なる役割を果たします。建物状況調査は主に中古住宅を対象にし、既存住宅状況調査技術者によって実施され、主要な構造部分や耐久性に焦点を当てます。一方、ホームインスペクションは新築から中古まであらゆる住宅に対応し、建物の状態を包括的に評価する点で異なります。建物状況調査とホームインスペクションは、購入者のニーズと物件の種類に応じて選択すべきであり、不動産取引における賢明な選択肢です。